BJだいち(びーじぇーだいち)
〜プロフィール〜
1953年11月、埼玉県秩父市に誕生
2004年 4月、大阪BIGCATにて「underground artist fest!!」をプロデュース
2004年 8月、「第2回詩のボクシング沖縄大会」でチャンピオン
2004年11月、第1詩集「ネオテニー日記」出版
2005年 4月、香川県にて「ことばのライブAWC」をプロデュース
2005年 9月、「ウエノポエトリカンジャム3」に出場
2006年10月、「秋田ポエトリーリーディング」の立ち上げをサポート
2006年12月、「AWC八戸ポエトリーリーディング」をプロデュース
2007年10月、埼玉県秩父市にて「ポエトリーカフェ武甲書店」開業
〜メッセージ〜
詩遊の編集コンセプトにマッチングした作品。詩で遊ぶ感覚を大事にしたい。
詩で交流しお互いがお互いの世界を尊重しあうような作品。
革命性のある作品。つまり安住しない作品。
言語による別世界構築に向けて、果敢にチャレンジする作品。
声に出してリーディングしたとき、新たな揺さぶりを与えてくれるような作品を期待します。
〜BJだいちの作品〜
「捨て去られるまで」
併合前
ここは
ひとつの
独立国だった
知知夫国
人口
約六万人
の国
父は
この国で生まれ
この国で育った
父は
系譜を辿り
系図をつくった
江戸時代まで辿り
自分の祖先をつきとめた
オノという武士だった
侍だった
父は
ほっとしているが
ぼくには
どうでもいいことだ
ミトコンドリア・イヴ説によれば
DNAは
母から
受け継がれてゆくという
悲しいかな
父の
祖先は
生物学的に
ほとんど
意味をなさず
自分が
男となって
生まれ出てから
父のDNAに
跡継ぎはいない
ミトコンドリア・イヴ
人類は
二十万年前の
アフリカの
ある
ひとりの女性から
すべて発生したという説
受精卵の
ミトコンドリアという細胞によって
DNAが伝えられ
男性の
ミトコンドリアは
受精と同時に
捨てられる
この説は
現在
ほぼ正しいとされている
男は
父は
捨てられる
少なくとも
DNAとしては
捨てられる
突撃する
ことが
父の
宿命だった
いまも
その通り
生きている
知知夫国は
武蔵国に併合し
武蔵国は
大日本帝国になって
父は
大日本帝国の
陸軍のひとりとして
突撃
した
やさしさも
いたわりも
あった
けれど
残虐な
こともした
父は
そのことになると
無口になった
けれど
ぼくは知っている
真夜中に
敵兵に
襲われている
父を
ぼくは知っている
あれから数十年が経ち
大日本帝国は
ニホンになった
そうして
生き残った
数少ない証言者の
父は
芝居じみた
おどけた口調で
伝えてくれた
ほんものの
捕虜で
試すんだ
銃剣構えて
試すんだ
うしろ手に
縛られた捕虜
ほんものの
にんげんで
試すんだ
新兵の
父は
度胸なく
はずしてしまい
それでも
ぶっすり
ぶっすりと
肉には
銃剣突き刺さり
ほんものだから
うめき
叫び
目もあけて
見開き
父に
訴える
そんなとき
将校がそばにいて
その捕虜
バッサリ
軍刀振り下ろす
芝居じみた
おどけた口調で
伝えてくれた
父は
それから
すべてを決めて
生きてきた
結婚して
数十年
父は
母の疑問に答えずに
今日の
今日まで
信じてる
父の筋肉
いまだ硬く
そうして
筋張って
頑丈な肩だ
あんまり頑丈で
足が弱って
それでも
頑として
弱い自分の足腰を
恥じている
父
父は一切
杖持たず
歩けぬことを
恐れてか
父は
命ずる
自分に対して
命令する
動くな!
そこから
一歩も
動くな!
絶対に
動くな!
と命令するんだ
父は
自分に
そうして
父は
母や
ぼくに
一切
すべてを
断絶するんだ
一切
すべてを
父の手紙に
父の文章に
父そのものは
一切
ない
父は
生涯
自らを
隠す
つもりだ
ぼくは知っている
父の涙
ぼくは見たんだ!
父の涙を
知知夫国
併合前は
ここは
ひとつの独立国だった
父は
ここで生まれ
ここで育った
父は
逃げなかった
いまも
父は
ここに
いるんだ
父は
ここに
捨て去られるまで
ここに